<先物手口情報の真実>

先物手口情報を信用してはいけない2つの理由

『先物手口情報を信用してはいけない』

このサイトの存在意義を根底から否定するような内容についての記事です。

毎日JPXによって提供されるデータを元に作成される先物手口情報は、『正確ではない』のです。

『正確でない』というだけで鵜呑みにしたり、全面的に信用してはいけないのはお分かりになると思います。

私は先物手口分析が最強の分析指標の1つだと考えていますが、過信と鵜呑みは禁物です。

本記事を読まれている方で、『正確ではない』何故と言い切れるのだ?と思った方もいらっしゃると思います。

本記事では、先物手口情報を信用してはいけない理由をお伝えしようと思う。

①JPXに乗る残高情報は『あくまで取引参加者からの申告である』から

最初期の頃、私は日本取引所グループ(以降JPXとする)が公開する情報は100%正しいだろうと考えていました。

これは大きな間違いでした。

私は、相場ではよく「不公正取引」について取り上げられるため、全ての投資は監視され、投資家に誤解を与えるような目的で情報は公開されないだろうと考えていたからです。
※金融庁や各証券会社の注意喚起には、取引残高の公表に関しては不公正取引ではどこにも記載されていないので、単に筆者の思い込みが悪い。

証券取引等監視委員会より引用:不公正取引について
株式会社SBIネオトレード証券より引用:不公正取引とは

私はとても誠実で真面目で思い込みが激しい(笑)ので、一時期はJPXが毎日公開する取引参加者別取引高で公開されている情報を鵜呑みにしていた。

しかし、必ずといっていいほど、私が集計した建玉残高の数値と、JPXが毎週第一営業日に公開される取引参加者別建玉残高一覧の値にズレが生じるのだ。

公開される情報が間違ってるわけはないのだから、私の集計方法に誤りがあるに違いない。

そう考えて、私はエクセルでの集計、pythonでの集計をし、さらには電卓でも計算を行ったが、やはり週明け第一営業日の残高一覧の情報とずれる。

私の集計が間違っているのか、それとも公開情報が間違っているのか、私だけでは解決できそうになかったので、実際にJPXに聞いてみました。

そして判明したのが、先物手口情報を信用してはいけない、まず1つ目の理由でした。

以下メールから一部引用。

「取引参加者別建玉残高一覧」の残高情報に関して

「2022年06月03日現在」とある場合、2022年6月3日のJ-NET取引が終了した16:00時点の建玉残高に、取引参加者からの申告を反映して記載しています。

筆者が問い合わせをしたメールへの回答から一部を引用

『取引参加者からの申告を反映して記載しています。』

言葉の定義を確認しいてきましょう。

『申告』とは

国民が法律上の義務として、官庁などに一定の事実を申し出ること

『申告』というので、『事実』を申し出ているはずなので、言葉の定義通りだとすれば正しい情報になるはずなのだが、アプリやツールを使って集計されたデータを『申告』しているとも記載されておらず、単にテキトウに数値を報告している可能性も考えられます。

しかし、『申告』という風になるのには、一応理由があるっぽい。

以下再度引用。

各証券会社の残高情報の実態に関して

個別の事柄についてはお応えしかねますが、一般論としてその後のギブアップや建玉移管等により取引日以降に取引参加者の建玉残高が変化する場合がございます。

ギブアップ制度および建玉移管制度の詳細については以下をご参照ください。

「取引参加者別建玉残高一覧」及び「取引参加者別取引高(手口上位一覧)」については、それぞれ別個の資料として公表しておりますので、ご理解のほどお願い申し上げます。

筆者が問い合わせをしたメールへの回答から一部を引用

ギブアップ制度:https://www.jpx.co.jp/derivatives/rules/give-up/index.html
建玉移管制度:https://www.jpx.co.jp/jscc/seisan/sakimono/transfer.html

ギブアップ制度と縦玉移管制度が影響し、建玉残高に変動が起こるということらしいが、筆者はあまり納得がいっていない。

この2つの制度を、凄くざっくりと説明をする。

ズレを生じさせる2つの制度

【建玉移管制度とは】

お客様の委託に基づく先物・オプション取引に係る未決済約定(建玉)について、他の取引参加者に引き継がせることをいいます。

顧客から清算参加者への建玉の申告は移管日の午後2時までに行われるとのこと。

建玉移管制度:https://www.jpx.co.jp/jscc/seisan/sakimono/transfer.html

【ギブアップ制度とは】

お客様が、取引参加者(大証において先物・オプション取引を行うための資格を有する証券会社をいう。以下同じ。)を通じて行った取引について、注文を委託した取引参加者と異なる取引参加者との間で決済関連業務(先物取引の決済時における差金、オプション取引代金および証拠金等の授受)を行うことを認める制度をいいます。

申告時限については、以下のように記載があった。

顧客から注文執行取引参加者へのギブアップの申告は、原則、委託の都度行いますが、注文執行取引参加者及び清算執行取引参加者との間で事前に合意がある場合は、注文執行取引参加者の指定する時限までに当該申告を行うことができます。

夜間取引(夜間立会及び J-NET 取引)の開始時から翌営業日の日中取引(翌営業日の日中立会及び J-NET 取引)の終了時までの1サイクルを「取引日」としているとのこと。

ギブアップ制度:https://www.jpx.co.jp/derivatives/rules/give-up/index.html
ギブアップ制度要綱:https://www.jpx.co.jp/derivatives/rules/outline/tvdivq0000003mke-att/nlsgeu000000v930.pdf

2つの制度を調べた上での所感

各制度については正直意味が分からないが、分かることは『いつ取引が行われるか明確に記載されていないから分からない』ということ。

なので、「取引日」の1サイクルが終わる15時から、1サイクルが始まる16時半の間に、何かしらの取引が行われる可能性があるのでは?ということが考えられる。

ああ、こういうところで個人投資家は知識としても不利になっているのだと痛感した。

まあ、ここで一番怖いなと思ったのは、『個別の事柄についてはお応えしかねます』と回答があったので、各証券会社の申告内容基準だからJPXは関与しないよ?というように伝えているようにも感じられたことなんだけど。

②参加者別の取引高は、直近2~3限月しか公表されないため。

次に、取引高の分析をし始めたときに疑問に感じていたのは、「SQ日直前まで出てこない限月残高が、SQ日直後に出現するのは何故だ?」ということだった。

これの理由も単純でした。

『日経225先物、TOPIX先物については直近2限月、日経225miniについては直近3限月、日経平均オプションについては直近限月分の取引手口が公表されるため』だから。

詳しく解説していきます。

SQ直後に直近の限月の残高が急増するのはわかる。SQで決済される建て玉分、新たにポジションを建てるというのが想像できるからだ。

例えば、「6月10日がメジャーSQ日だとして、6月10日の9月限の建て玉残高が急増する」というもの。
(とはいっても、これもSQ日の1週間前くらいから増減しているのではと推察される)

しかし、何故か6月10日までに全く手口情報に出てこない12月限が、6月10日時点の取引残高情報で急に大量に出現する、という事象が発生する。

半年追っていた当日取引高には一切12月限の情報は出ていない。いくら探しても12月限の情報はどこにも記載されていない。

情報がどこにもないことに疑問を感じたため、実際にJPXに問い合わせしてみた。

以下メールから一部引用。

御質問の件につきまして、以下のとおり回答いたします。

取引参加者別取引高(手口上位一覧)では、日経225先物、TOPIX先物については直近2限月、日経225miniについては直近3限月、日経平均オプションについては直近限月分の取引手口が公表されております。

日経225先物の2022年6月限の取引最終日が6月9日ですので、手口上位一覧における2022年12月限の手口は、6月10日取引日分からの公表となります。

手口上位一覧には公表されておりませんが、6月9日以前にも2022年12月限の取引は行われているため、建玉残高は取引参加者別建玉残高一覧に記載の通りになります。

今後ともよろしくお願いいたします。

筆者が問い合わせをしたメールへの回答から一部を引用

機関投資家は、我々の見えない部分で取引をし、大きなポジションを持っていることは秘匿されている。
(実際にチャートを見ていたり、毎日の各証券会社のツールからデータを抽出し、公開データとの差で隠されているポジションを推察することは可能っちゃ可能。しかし、どちらにせよ、どちらのポジションに偏っているかは所感になってしまう。)

そして、週明け15時半頃、データ更新が遅いときには17時頃に、個人投資家は機関投資家の取引高の情報を知ることができる。

なので、完全にこの公表される取引高のみを参考にしてトレードをすると、価格的に明らかに不利な場所でポジションを持つことになる可能性が生じる。

これを知らない人は、「データの集計が間違っている」と憤慨したり、または遅れて公表される結果を見て狼狽してしまう。

まとめ

「そもそもこのデータは正しくない、あくまで『申告された情報』だから、多少参考になる程度の情報だ」という風に事前に知ることが手口情報を扱う上では大事だ。

正しいかもしれないし、正しくないかもしれない。

私は手口情報こそが最強の投資指標だと考えは変わらないが、案外そんなこともないじゃんと感じた人もいるかもしれない。

取引高の情報は、明らかなポジションの偏りを把握することができるので、将来どちらのポジションに圧力がかかるのか?ということを推測することができる。

また、この『将来』というのが先物取引の性質上、『限月』ということで将来の区切りが見えているため、手口情報は投資を行う上で役には立つ。

ただ、過信と鵜呑みは禁物だ。

そうでないと、筆者のように

「「「「「なんか全然集計合わないんだけど!!!!!!」」」」」

と発狂する羽目になる。そんな方が少なくなるように、この記事が御役に立てたなら幸いです。

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